「ドーン、大丈夫!ソロプチミストはあなたを信じている」
日差しがまぶしい5月のある朝 そんな言葉がドーンさんの頭をよぎりました。
ドーンさんが夢を生きる: 女性のための教育・訓練賞で最初の賞金を 受け取った瞬間から、この言葉が彼女を励まし続けました。寄付者の 皆様からいただいたご寄付には、常にこうしたパワフルなメッセージが 隠れています。
その時とその後に続く助成金により、ドーンさんは自分の意思で決定 する力をもらいました。夢を生きる賞とソロプチミスト会員の支援のおか げで、自ら賞金の最善の使い道を決め、ドーンさんは自信を持って、より よい未来に向かって一歩踏み出すことができました。
ブリティッシュ・コロンビア大学から法律の学位を受け取り、ステージを歩くドーンさんは、涙ぐんだ目でステージから聴衆を見ました。娘二人の 姿を見つけると、娘たちは愛と、プライドと激励の笑みを浮かべて母を 見つめていました。
ドーンさんは、自分の目を信じられませんでした。ほんの数年前には 夢にも想像できなかった光景だったからです。
ドーンさんにとってこれは 並外れた功績でした。
他 の す べ て の 受 賞 者 の 方 々 と 同 様 に 、ド ー ン さ ん は 、人 生 で 多くの困難を克服して弁護士になりました。
子供の頃、ドーンさんの夢は、弁護士になって、世界を変えることでし た。しかし悪夢のような現実に直面し、次第に彼女の夢は色あせて消え ていきました。
ドーンさんが生まれた時、両親自身が未熟で、子供同然でした。 十代の若い両親の生活は貧困と暴力の連続で、自分たちが親から受け た仕打ちをドーンさんに繰り返しました。
8歳の時ドーンさんは、長年受けた暴力と性的虐待の痛みを和らげ るためにアルコールを飲み始めました。
11歳で児童福祉システムの世話になり、 12歳になった時には、クラック・コカイン中毒のホームレスとなりました。13歳で学校を中退し、
15歳の未成年で虐待関係に陥り、妊娠しました。
このような困難とトラウマに直面したら 立ち直れないの が普通ですが......ドーンさんは 違います。
ある日当時のパートナーからひどい暴力を受けた後、台所の床の上で 目を覚ますと、あたりは血の海でした。
その時ドーンさんは、乳児の娘の目を見て、
即座に虐待と 暴力の連鎖と決別することを誓いました。
病院に何週間も入院して回復を待つ間、ドーンさんは、自分の中に ある力をふり絞り、人生を取り戻す計画に着手しました。その道のりに 教育が欠かせないことは分かっていました。教育があれば、経済的に 自立することができ、やがては子供の頃の夢を実現できると確信してい ました。
ドーンさん、独立をめざす 最初の一歩を踏み出す。
以 前 の 自 分 に 別 れ を 告 げ る 決 心 を し た 後 、ド ー ン さ ん は ビクトリア大学の通信教育プログラムに合格し 児童・青少年養育の学士課程を修了しました。
その頃、彼女は、児童福祉施設に預けられていた自分の兄の幼い娘を 養女にして、家族が増えていました。ひとり親として常勤で働きながら 大学の費用を払う毎日で、借金が増えていきました。
ドーンさんは 経済的な苦境に追い込まれ、人生設計から足を踏み外しそうになり ました。
食べ物がほとんどないこともまれではありません。娘たちに夕食を 作って食べさせても自分はひもじい思いをする夜が何日もありました。
しかし最初に夢を生きる賞を受賞して以来、食料と教育のどちらに お金を使うか選ぶ必要はなくなりました。
二人の娘をかかえて生き残る術を探るのではなく、受賞後は、娘たちを養育しながら自分の人生と 教育を考える余裕ができたのです。
ドーンさんは、今、娘たちの人生と地域社会、ひいては世界を大きく変 える道を歩んでいます。弁護士としてのキャリアを通じてドーンさんは自分 が直面したような困難に立ち向かう社会の底辺にいる女性たちに注目す ることでしょう。